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スペシャルインタビュー
インタビュー特集記事です。

海洋堂宮脇社長インタビュー


熱く語る宮脇社長

小雨降る五月某日、かたどりドットコムチームは、サイト作成にご協力頂いた、食玩・ガレージキットのトップメーカーである海洋堂の宮脇社長を本社門真に訪ねました。
90分に及ぶインタビューで、社長から模型作りに対する熱い想いやご自身の型取りの経験を語って頂きました。

インタビュアー 旭化成ワッカーシリコーン(株)
代表取締役社長 二宮 聖

(会議室中に整然とディスプレイされた作品の数々に圧倒されて)
ずいぶんたくさんの作品があるんですね。ここにはこれまでのすべての作品が飾られているのですか。

いやーまだまだ入りきらない物も数多くありますよ。
最近でこそ、世間に認められているガレージキット、食玩ですがプラモデル同様、世間で認められるには大変長い年月がかかっています。
今はプラモデルは大人が普通に買えるようになりましたが、70年代ころにはいい年をした大人が買っていると、世間からは白い目でみられたりして買うときにはそれとはわからないように包んでもらったりしていました。プラモデルというのは模型のなかでも低いレベルと認識されていたんですね。
模型という物は全て人が作っている物なのですが、実はコンピュータや何かで適当に作り出す物と思われていた時代もありました。
その様な中で、模型の中に原型製作者の名前を初めて入れたのは海洋堂なんです。
造型師松村しのぶが作った動物は素晴らしいですよ、とか、谷君の作ったタイガー戦車はかっこいいですよとか、作者の名前を出したんですね。それはとても海洋堂にとって誇れる部分です。
有名な模型メーカーが作る物でも、けっこういいかげんなところもありまして、正確無比な複製と思いきや明らかにデフォルメだったりする事があります。我々が模型を通じて神様みたいに憧れていた物が、実物は割りとたいした事なかったりする事もある訳です。

私もレベルとかモノグラムとかのメーカーの物が好きだったんですが、ああいう物でも、そういったデフォルメはあったんでしょうか。

モノグラムは、戦車とかに関しては絵を書いているような感じで、スケールモデルではないですね。飛行機はセンスを入れてすごくいいアレンジをしています。
モノグラム、レベルの初期のモデルっていうのは最高にいいアレンジの絵画的な要素を入れていますね。メーカーとしての思想が入っておりますし、抜きん出ています。
モノグラムは素晴らしいデフォルメのセンスを持っていましたね。
僕は大好きでした。他に、レベル社っていうのが、僕らが生まれた56,7年ぐらいに、素晴らしいプラモデルを作っていましてね。スカイレーダーなどは「このプラモデルに出来ない事は飛ぶ事ぐらいです。」みたいなふれ込みの物でしたが、そういう物が今から40年も前に設計されていた訳ですよ。

当時のレベルの社長というのがとてもバイタリティーと好奇心のある人で、いろんな物に創造欲を持っており、スミソニアンや自然史博物館などからの素材をモチーフにして、ありとあらゆる模型をどんどんやっていたのですが、60年の終わりに急逝されてしまいましてね。その方が亡くなってから、そういったメーカーの開拓精神が無くなってしまった様に思います。
そのようなリーダーがいなくなることで、業界全体が衰えてしまう事があるというのは、アメリカのプラモデル事情を振り返ると良く分かりますね。

ドイツ軍88mm砲を見上げる
宮脇社長

そうだったんですか、日本の場合はどうなのでしょうか。

日本の業界でもそうですね。22,3年前に私どもが海洋堂として世に出た頃には、小学校の一つの校区に5,6件模型屋さんがあったものです。それが今では模型屋さんが街から消えてしまったんですね。

そうですか。そういえば学校の近くに昔通ったようなプラモデル屋さんを見かけなくなった様な気がします。

1軒も無いですよ。昔ながらの模型屋さんっていうのはもうこの世の中にほとんど存在しない様ですね。昔は何万軒もあったんですよ。
プラモデルという文化が無くなってしまって、プラモデルメーカー自身も当時の何分の一に減ってしまって、今は12,3社しか残っていません。
1958年に、マルサンという会社がノーチラス号という初のプラモデルを作ったんですが、それが日本のプラモデル業界の始まりです。
ところが、日本のプラモデルというある種の文化が50年で衰退してしまったのは、第一世代のメーカーも小売店も問屋もプラモデルの可能性に不勉強だったからだと思います。
プラモデルは海外から始まったものではありますが、プラスチックという安くて大量にすばらしい物が出来る良い素材に出会ったのに、結局それを70年頃までしか使いこなす事が出来なかったんですね。最初の10年間くらいがプラモデルの黄金時代で、後はもう72年頃からは下降というか、もう何も新しい物は生まれなかった時代ですね。

そうですか、意外に短かったんですね。ということは私が、一生懸命作っていたのはちょうどその黄金時代だったんですね

その後には、スーパーカーやラジコンとかが入って来て、プラモデルが模型という文化で無くなり、おもちゃ化してきたのです。模型文化が模型的文化になってしまったという訳です。博物館的な楽しみというか、人の知的好奇心に訴えるというんではなくて、もっと幼稚な物になってしまったという事です。プラモデルの敗北じゃないですかね。その後のプラモデルには、本来持っている模型の楽しみ方が無くなってきてしまった訳です。
昔のプラモデルは、ただ作るだけではなく、パッケージに入っていた物語、背景を知る楽しみ、また、想像する楽しみがあったものです。ちょうどパッケージごとに「プロジェクトX」が入っている様なものでした。

そうでしたね。飛行機一機作るにも、当時の写真を集めたり、活躍した時期、場面設定など調べましたね。

模型の楽しみっていうのは、ただ見せるっていうだけではなくて、それによってどんどんある種のいい意味でのオタク的な部分、バックグラウンドとかストーリーとかそういうものも全部含めて理解していくと楽しみが広がっていくはずなんです。

海洋堂がおかげさまで造型作家集団として目立つことが出来ているのは、他のメーカーには無い様な作り込みがあるからだと思います。 たとえば、漠然とは知っていたけれど、深く知る機会が無かったり、もう少し深く知ってみたいなといった、ある種興味をそそる様な味付けをして紹介しているからでしょう。器用に細かく作る事は誰でも出来る事ですから、そこにキャラクターがたつというのは、海洋堂が取り入れている模型的楽しみというか、オタク的な部分というべき物のせいでしょうかね。そう言ったものが入るのが海洋堂の海洋堂らしいところではないでしょうか。

なるほど。オタク的な要素とおっしゃいましたが、そのような、創造的な作り込みを継続的に続けていくという事は大変なご苦労があるのではありませんか。

僕らの事をマニアがマニア向けの商品を作っていると勘違いされる方がいらっしゃいますが、技術屋さんとかマニアに任せているととんでもないことになります。深く狭く小さく、ただひたすら掘り込んでいくし、彼らはほっとけばひたすら一年経っても一つの物を作り続けますからね。物を作る人間というのは、みんな一方向には秀でているが、一般的な楽しみをしないやつがほとんどなんですね。うちの原型師でも女の子にもてたいとか、おいしい物を食べたいとか、おしゃれしたいとか良い格好したいとか一切無くてひたすら物づくりに徹している人間な訳です。僕自身も物を作る人間ですから、なかなか難しい事ではありますが、マニア向けでありながらマニアにならない様にするところが海洋堂なんじゃないでしょうか。

時間を忘れ語り合う宮脇社長
と二宮

ところでお礼を申し上げるのが大変遅くなってしまいましたが、この度は私どもの「かたどりドットコム」のサイトの作成にあたり、原型をお貸し頂きまして誠にありがとうございました。私どものサイトは物を作る方々に幅広く情報提供することを目指しているのですが、そのような方々によりお役に立てる様なサイトにしていくためにアドバイスを頂けませんでしょうか。


そうですね、いかにもメーカーさんが作った様な理屈っぽいサイトかもしれませんね。もっと分かりやすく、そして型を取る事の面白さをいかに伝えるかの工夫が必要ではありませんか。さらに、ワンフェスやフリマにどうしたら持っていけるのかまで教えてあげられるといいかもしれないですね。
例えば、自分が型を取ってアクセサリーを作りましたと。こういうので、何が面白いのかというとシリコーンゴムの型で同じものがパカパカ何個も出来るという事です。
私もあの感動はいまだに忘れません。我々がガレージキットを始めた頃は、色々な樹脂類も出てきた頃で、シリコーンで型を抜く際も様々な試行錯誤があったものです。
パカパカ何個も出来るという事は、楽しい訳なんですよ。ただ何百個も作るとそれはそれで途中から苦しみに変わるんですがね。ちなみに僕の場合は仕事も模型、趣味も模型ですから、模型の疲れは模型で取ってます。

僕らはガレージキットメーカー草分けとして、ワンダーフェスティバルというイベントを年に2回やっておりまして、おかげさまで活況を呈しております。立体版の同人誌の様なものです。ワンフェスというのは自分が作った好きな物を人に見せる事が出来る訳です。そして、作った物をシリコーン型で複製する事によって人に売る事が出来るんですね。
我々も、小売店からメーカーに変わった訳ですが、今はブログ等で誰でも人に物を発信できる時代ですしね。フリマをはじめ色んな所に作った物を売れる訳です。ワンフェスを頂点とした所で、造型物を複製して立体物は面白いですよとか、同じ複製が抜けた瞬間とか、複製がズラーッと並んだ感動を伝えられたらいいと思うんです。

私どもも、ものづくりの楽しさが世の中に広がっていく事に、「かたどりドットコム」を通して少しでもお役に立ちたいと考えております。

本日は、お忙しい中大変興味深いお話をお聞かせ頂きまして誠にありがとうございました。


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